わが行く道よ 正しくあれ
石ころごろごろたりとも
わが往く道よ 大きくあれ

心平

昭和十九年に出た草野心平の詩集『大白道』に収められた最後の詩の最後の二行。詩は戦争にかかわる時人の苦悩に満ちる。
 いくどもいくども突きあたり。/真空圏にのめりこみ。/
 いくどもいくども。/よろよろよろけ。/たちあがり。/
 よろよろよろけ。/たちあがり。/ああその果てに。/己
 の過信にどきりとし。/行わざるものの。/それは錯覚に
 すぎないと。/よろけなどとはずいふん立派なお話だと。
 /天日のもと泪し。/決意し。/そして新しく行こうとし
 ます。/わか行く道よ正しくあれ。/石ころごろごろたり
 ともわが往く道よ大きくあれ。
  草野心平(1903〜1988)は詩人。詩集『第百階級』『蛙』など。