どうせ君の肺腑から出た事でなくては 人の肺腑に徹するものではない
ゲーテ

同じ第一部「夜」のなかで、学生ワグネルに向かってファウストが教える言葉。肺腑は肺臓。転じて心の奥底。自分の心の奥底から出たことでなければ、ひとの心の奥底に届くものではない。そんな思いだけが人に通じ、そんな言葉だけが人を動かす。刻々に世界を創る。
アラビヤにこんな謔がある。
 あなたが何か言うときそのI言葉は沈黙よりよいものでなければならぬ。
思いたかまり、自然にロをつく言葉だけが、そういう働きを持つ。